林富永邸は、明治16年(1883年)に四代目の富永護右衛門によって建設されました(2021年現在で築138年)。
もともと高田藩の御林であった地に邸宅を建設し、地名の「立林」から「林」を屋号として取り、「林富永」と呼ばれるようになりました。富永一族が神田地区に居を構えたため周辺には富永姓が多く、屋号で呼ばれています。
茅葺き屋根の母屋は、豪快なけやきの梁や鴨居で構成された農民仕様の部屋と、書院造りの座敷をはじめとする武家仕様の部屋に仕切られています。杉苔が敷き詰められた枯山水庭園は、水田や山々を取り入れた借景庭園であり、林富永という名前に相応しい銘木・巨木に囲まれています。囲炉裏や釜戸も当時のまま保存されており、現在も当主家族が生活しているのも特徴です。
平成19年(2007年)には上越市文化財にも指定された歴史的建造物です。維持・保存するだけでなく活用することで後世に継承していこうと、文化財や観光ポイントとして広く一般に公開し、飲食や様々な体験が可能な場として活用が始まっています。また、地元の皆様に支援いただいているサポーターズクラブも立ち上がり、地域の宝として位置づけられています。

富永家は、江戸時代に神田村(現在の上越市三和区神田)に土着し、幕末まで庄屋役を務めた名家を本家としています。神田地区には、本家富永家から分家や隠居などにより分立した一族が多く居を構えました。林富永家もその内の一つであり、奥州小名浜(現在のいわき市)の代官の手代を務めた富永護右衛門(延享4年・1747年生)が安永9年(1780年)に神田村に帰郷し、居住したことに端を発すると伝えられています。
明治8年(1875年)には、四代目富永護右衛門(四代目まで護右衛門を襲名)がかつて高田藩の御林があった土地を購入し、明治16年(1883年)に現在の建物を建設して居を移しました。

林富永邸は、文化財指定の館に相応しく田園風景が一望できる小高い庭園の中にあります。入口の杉並木(木戸)を抜けると、どっしりとした茅葺き屋根の住宅が落ち着いた佇まいを見せます。
母屋の南側および西側は、杉苔を敷き詰めた枯山水庭園です。庭の西側の杉林を切り開いた借景庭園は、眼下に広がる水田を「うみ」に、西頸城の鉾ヶ岳や権現岳を「やま」に、北西手前の小高い丘陵を「みさき」に見立てられているとされています。
建造物はほぼ建築当時のままで、室内には囲炉裏や釜戸がそのままの形で残されており、当時の生活を偲ぶことができます。それぞれの部屋は、けやきや杉の太い柱や梁が重量感を出しています。一部屋一部屋が広く、天井が高いのが特徴です。

母屋は茅葺き木造住宅、延べ床面積が458.87㎡(約250畳)、土蔵が2棟(うち米蔵は上越市指定文化財)あります。

重量感があり豪雪にも耐えてきたけやきの梁が、農民仕様の広間に豪快な印象を与えています。また、四方を囲む差し鴨居も雪国ならでは太さです。

床の間、襖、長押、天井などが許された武家仕様の座敷は書院造りとなっており、派手さはありませんが上品で繊細な建具の細工や木材の吟味がされています。

奥座敷の書院から望む庭園は、眼下に田園風景が一望でき、自然の風景を取り入れた借景庭園です。庭園には銘木や巨木が多く、杉は約500年、もみ・しだれ桜・もみじは200~300 年の樹齢と言われています。

奥座敷の狩野派の屏風や勝海舟の書。他にも、犬養毅、五姓田芳柳、巌谷修など、著名人・文化人との交流がありました。勝海舟は、岩の原葡萄園の創業者・川上善兵衛と子弟関係にあり、林富永邸にも訪れています。

囲炉裏から立ち上る煙に燻され、茅葺き屋根は虫や湿気から守られてきました。杉の枯葉と火吹き竹で火をおこせば、囲炉裏の火を眺めながら和やかに会話がはずみます。

重要顧客が手を洗う蹲(つくばい)から流れ落ちた水により、水琴窟が軽やかで透明感のある音色を奏でます。

来店・来邸される方へのお願い
林富永邸は上越市指定文化財であり、長くていねいに維持・管理されてきた貴重な歴史的建造物・庭園です。文化財として保護し、より多くの皆様に心地よくお過ごしいただくために、以下につきましてご理解とご協力をお願いいたします。

・木戸(道路からのアプローチ)が狭い砂利道ですれ違いができません。対向車が無いことを確認いただき、最徐行でご通行ください。
・室内保護の観点から靴下の着用をお願いしています。また、濡れたり汚れている足・衣服での入室もご遠慮いただく場合がございます。
・破損や汚れなどにつながりますので、柱、建具、ガラス、展示物などに触れないようお願いします。
・騒ぐ、走るなど、他のお客様に迷惑となる行為はご遠慮ください。
・敷地内は禁煙となっております。また、危険物の持ち込みもお断りしています。
・立入禁止・入室禁止のエリアには入らないようお願いいたします。その他、従業員・係員の指示に従っていただくようお願いします。

林富永邸について(上越観光ナビ)